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2007/06/28

住民税納付に伴う増税感

 住民税の納付書や給与明細を開いて、あまりに高い地方税額に衝撃を受けた人は少なくないだろう。新聞の読者投稿欄などでその一端を知ることができる。ある新聞に次のような投稿があった。
 「税額は前年の2倍。昨年は3倍だったから、2年で6倍だ。これが、小泉前首相の言っていた『骨太の方針』や『三位一体改革』とかの正体か。怒りがこみ上げてきた。さっそく市役所と総務省、小泉事務所に電話作戦を敢行した。市役所は、法律にのっとっての一点張り。総務省は、増税と認めず税源移譲だと言い張る。〔中略〕電話番号を探し当てた小泉事務所では、女性秘書が、『小泉はもう現職ではございませんので、役所か現職の方にお尋ね下さい』。木で鼻をくくったような応対に、私は、はしたなくも『バカヤロー』と3回も叫んでしまった。すると、『それで気はおすみですか』だって。」
 76歳、無職の老婦人である。老齢にもかかわらず、納得できないことがあれば、各所に問い合わせる気力を持ち続けておられることに感心した。老人は見くびられているだけになおさらである。まず老年者控除が無くなった。老人虐待だ。次に定率減税の廃止と税源移譲だ。これらが重なって(それに健康保険料や介護保険料の増額が加わる)、増税感が身に迫ってくる。この方は2年で6倍になったのに対し、拙者の場合は、その間、所得はほぼ同じで、住民税は4倍となった。

 では政府の言うように、税源移譲は、所得税を低くして住民税を高くするから、一人びとりの納税者にとってトータルで税額は同じになるというのは本当だろうか。数字に弱いながら拙者もまた、役所の税務課に数回にわたって電話をし、税率変更の詳細を尋ね(当方の役所では的確に答えてくれた)、計算の仕方をやっとのことで把握した。結果、トータルの税額が同じであるというのは、ある保留のもとで、総体としては本当である。「ある保留のもとで」と言うのは、住民税と所得税との課税対象となる所得が同一であるなら、という仮定がつくからである。ところが両税は同一年の所得を基準として算出されるものではない。つまり、多くの人において大幅アップとなった今回の平成19年度住民税は平成18年1月から12月の所得に対して課税されたものであるのに対し、その分ダウンされるという今年の所得税は平成19年1月から12月の所得に対しての課税である。だからここに1年のズレがある。平成18年の所得に対する課税額だけをみると、すでに納めている所得税(平成18年分)は減額されておらず住民税だけが増額となったと言える。これは1年だけのことだが増税以外の何ものでもない。(ただし、高所得者層では住民税減、所得税増と変わる税率となっているので、一般庶民とは逆である。低所得者層ほど住民税増〔所得税減〕の幅が大きくなるような税率が設定されている。) 今年の所得税(平成19年分)でダウン(高所得者の場合はアップ)される分は、正確には来年度の住民税(平成20年度)のアップ(ダウン)分と差し引きされるべきではないか。そうであれば課税対象所得が同一であるから差し引きゼロということになる。
 また平成19年の所得が前年と比べて大きく下がったこと等により平成19年分の所得税がかからなくなってしまった人(住民税増額分が所得税減額分で補えない)に対しては救済のための調整措置がとられるそうだが、平成18年の所得の特殊事情(平成18年にたまたまある程度の特別な所得のあった人は高い住民税を負担しなければならない。逆にこの年だけ特別に所得が低かった人は負担が小さくてすむ)に対する措置は何もない、とのことだ。
 話が込みいってきたが、要するに、住民税の税率変更を1年先にし、所得税の税率変更を先行させれば、このような問題は生じない。そういうわけで、新しい住民税方式の今年度からの適用は公正でない、という感がぬぐえないのだ。

 そして定率減税の廃止だ。そもそも、定率減税はなぜ全廃止されたのか。景気がよくなったから、と言うが、とりわけ低所得者層はその恩恵を全く受けていないのが現状ではないか。だからこの層の人口がいっこう減らないのではないのか。また景気がよくなったのなら、それによって大きな恩恵を受けている企業の切り下げられていた法人税を、元の水準に引き上げるべきだろう。それで釣合が取れるというものだ。なのに法人税はそのままで大企業を潤わせ、定率減税の全廃が低所得者層のふところを直撃するように仕組まれているのである。

 税源移譲を説明する政府の「あしたのニッポン」第1号が配られてきた。課税対象所得の1年のズレのことも、所得者層によって異なる税率のことも一切言及されていない。所得税と住民税とはトータルで同じだと、1つのモデルを例にとって説明するだけである。都合の悪いことは書かない商品の宣伝文と同じだ。こんなビラの1枚でも日本の全所帯に配布するカネの額は大変な数字となるだろう。その配布は大新聞の配達ルートを通して行われているようだが。これから政府の都合のよい情報を、第2号、第3号と続けて流していくのだろうか。投稿した老婦人のように拙者もまた「バカヤロー」と連呼したくなる。

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コメント

作田氏の健筆をうれしく思います。ひとつの「バカヤロー」の仕組みに対して(労働価値という)説を成し、力を集めよう(「万国の労働者よ」という呼びかけを)としたひとにマルクスがいました。私たちはいまの「バカヤロー」をどのように力にするか? 漫画『あしたのジョー』のとおり、「ボディー攻撃がじわじわと効く」のですが、体躯を滅多打ちにされているのが、生活者、障碍者など社会弱者という絵は、ひどーいコミカルです。今生の地獄絵! なぜだか、どうも国内の学問の業界では「バカヤロー」をうまく掬ってこなかったように感じます。私たちも怒り方が拙い。さても、社会学に狭めず、バカヤローを力の生成へと導く学がもっと蠕動してほしい、ノシ歩いてほしいと思うのは、私だけでしょうか?

投稿: 竹本テツ | 2007/06/29 23:31

同感です。バカヤロー。

投稿: blog49 | 2007/07/09 14:35

はじめまして。なるほど♪ママと申します。

事後承諾の形でもうしわけありません。
こちらの記事をひとりでも多くの方に読んで頂きたいと思いまして、微力なブログではありますが、ご紹介させて頂きました。

不都合がありましたら、お知らせ下さい。
すぐに、削除致します。

どうぞ、宜しくお願い致します。

投稿: なるほど♪ママ | 2007/07/10 17:08

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